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5冊目『ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版 』/佐々木典士

ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版 (ちくま文庫)

ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版 (ちくま文庫)

 

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ -』の文庫版が出ていました。書いてあることは、文庫化される前とほぼ同じです。

ミニマリストとは最小限のモノで生活しようという新宗教思想です。

僕は何度読んでもミニマリストに同調できないマキシマリスト(で、あってる?)なんですけど、必要以上に物を買い込まないことは、僕らの心を逆に豊かにしてくれるという主張は、ある程度限度を超えなければ、意見を一致させたいところではあります。その分後で捨てたりなんなり面倒だし、部屋汚くなるしね。

ムダなものをかわされることに慣れてきてしまった我々には、大量生産大量消費時代の大きな反動として出現したミニマリズムは、その大胆さゆえに眼を引くものがありますが、ムダと断定したものの中に大切なものが混ざっていたりするのを恐れる僕としては、そのムーブメントの全体を肯定できないのです。

ちょっとだけ真似してみようかな~と思って、支払い用紙も確認せずに捨ててしまったり、銀行に登録していた印鑑も捨ててしまったり、大変でした。

こちらの本のファンにとっては朗報なのですが、文庫化時によくある<増補版>です。本書には、モノを手放すための教えである「モノを手放す方法最終リスト」というものがあるのですが、そこに10個の新たな戒律を付与し、合計80個のルールとなりました。さらに3年前の爆発的ミニマリズム流行への分析、別のミニマリストによる本書解説がたっぷり増補。本書を今から読む、本書を知らななかった、ミニマリストってなんだろう?という人はお買い得です。

ただ一つ残念なのは、この本だけはミニマリズムの教えから反しているという所です。

正直本書の内容は、増加前の「物を手放す方法最終リスト70」と、それの解説を見開き2ページにして、インターネットで配布しておけばよかった。それで物を捨てられないやつは、それこそ断捨離してしまえばよかったのです。

本書は文章のミニマル化ができていないばかりか、今回の文庫化によって、逆に文量が増えています。大矛盾がこの世界観において存在しております。大切なことは一行にまとめていたり、本の薄さが20ページとかだったら良かったのに、結構分厚いもんだから、マキシマリストな僕としては、これは嬉しいという結果に。本棚が埋まってホクホク。

この本を書いた人はめっちゃいい人だと思います。物に支配された我々マキシマリストに対して、苦心しながらも、そして教えに反しながらも、マキシマムな量で僕らにミニマリズムを布教してくれたのですから。そして、「何事も中くらいが一番なのかもしれない」ということを、我々に痛感させてくれる書であります。

この文庫版、ミニマリストの方は、既に単行本版をお持ちの方はこれ以上物を増やさないために、入手できないという点も悲しい。立ち読みで済ませましょう!もう少ししたらどうせKindle版で出るので、無理して今買わなくてもいいかもしれません。

僕の書評はだいたい3000文字くらいなのですが、ミニマリズム実践!ということで、このくらいでやめときます。

ちょっと意地悪すぎたかな。

増補前のKindle版ならありますよ!ということだけお伝えして終わりたと思います。