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14冊目『読む数学記号』/瀬山士郎

読む数学記号 (角川ソフィア文庫)

読む数学記号 (角川ソフィア文庫)

 

文庫-LOGの本体は、雑記ブログ『点の記録』 であります。

その点の記録では、度々、僕は数学が苦手であるということを話題にして記事を書いています。あーできない、あーできないと言い続けて十ウン年経っております。でも、数学を理解できないことのハンディキャップというのは、あらゆる抽象概念を理解する上で、解消したほうが良いことに気が付きまして、今は数学をおさらい中なんです。

詳しくは、こちらのエントリーで書きましたので、長ったらしい文章で恐縮ですが、読んでみてください。

さて、数学の理解への道は数多くあるかと思われます。

僕の友人に数学が得意な人間が複数おりまして、「高校数学までは暗記したほうが効率的だ」という意見が多いんです。学者のエッセイなんかを見ると、丸暗記系の学習方法は応用が効かないからやらないほうがいいとか、いや、必要な部分までは暗記でいったほうが効率が良いとか、意見が分かれるところです。はてさてどっちが正しいのか。

2015年に経済協力開発機構OECD)が実施した学力調査(PISA)によると、日本の数学的リテラシーのランキングは、参加した72カ国中5位でした。1位はシンガポール。このテストの対象は15歳の学生のものです。

この時点での数学の学力は、日本ってアメリカやヨーロッパ諸国などよりも高いんですね。(https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/01_point.pdf

ということは、中学数学までは少なくとも世界に通用する学習方法かもしれませんね。すると、数学は暗記でも良さそうかも、という意見が僕の中でふつふつ出てまいります。

しかし、教養としての数学を身につけるために、あの分厚いチャート式の問題集をやるのも、なんだか気が重いなぁ……と諦め悪く書店をさまよっていたときに購入したのが、

瀬山士郎著『読む数学』(角川ソフィア文庫です。

数学が苦手な人間の特徴に、「数学記号が苦手」というものがありまして、僕も数式なんかが文中に出てくると、顔が引きつります。この記号に焦点をあてて、懇切丁寧に解説してくれているのが本書の特徴です。

基本のキである、アラビア文字の123……や、0、四則演算や少数、分数などの小学生の範囲から始まって、大学数学の入り口あたりまでをカバーしています。数学記号に苦手意識がある人は、読んでおいて損はない。

記号の意味を理解しておくだけで、数学への抵抗感が、おどろくほど減るのが実感されるでしょう。

先程の数学習得への道の話に戻りますが、暗記と計算練習という以外に、こういった「読んで理解する系」の数学勉強法もいいのかなと。公式や解法の習得は暗記、問題の証明や式を解くのが計算練習で、じゃあ「理解」はどういうところからできるのか。

これは、もしかすると日本語という慣れ親しんだ文章で、記号や式そのものは、どういった意味を持つのかという、ちょうど外国語を学ぶときのような感覚で攻めたほうが、なんだか脳みそには良さそうではありませんか。

そういえばちょうど、Facebookで上記の数学コンプレックスのエントリーを共有したときに、コメントで「イメージから入るのもよし」とアドバイスをくれた方がおりまして。この本は、そこにも通ずるものがあるんじゃないかなぁと思いました。

数学に馴染みのない人を対象に書いている書籍ですから、図説で分かりやすく説明してくれているのはありがたいです。数学本特有の、「実は数学知識が必要でした」というオチはありません。演習問題に飽きたら、こうした数学読み物から知識をさらうのも良いかもしれませんね。文庫サイズで携帯できるので、学生の方は予習・復習用としても良さそうですし、社会人なら、頭の体操になるかもしれませんな。

<目次>

第1章 はじめての数学記号たち―小学校で学ぶこと
第2章 その次の数学記号たち―中学校で学ぶこと
第3章 少し進んだ数学記号たち―高校で学ぶこと
第4章 もっと進んだ数学記号たち―大学で学ぶこと